韓国製ボツリヌストキシン、メーカー名の次に聞くのは単位と打つ間隔
執筆 KCODI医療通訳チーム · 日本語デスク更新日 · 7 分で読めます編集 KCODI医療通訳チーム
結論から言うと韓国製ボツリヌストキシンは、韓国のメーカーが作り韓国の当局の許可を受けた製剤です。診察で医師が確認するのは製造国より、部位ごとの単位、希釈、前回からの間隔です。

韓国製ボツリヌストキシンとは、韓国のメーカーが製造し、韓国の医薬品当局である食品医薬品安全処(MFDS)の許可を受けて流通している注射用の製剤のことです。筋肉を動かす神経の信号を一時的に弱める、という働き方は海外製と同じ系統にあります。ただ、ソウルの診察室で役に立つのは「韓国製かどうか」より、その先で出てくる言葉のほうです。
連休に観光と美容をまとめて計画していると、メニュー表のメーカー名を比べることに時間を使いがちです。私たち通訳チームが診察室でよく見るのは、製剤の説明が終わったあとに「何単位入れますか」「前回はいつ打ちましたか」と聞かれて、答えに詰まる場面です。ここでは、韓国の診察とメニュー表で出てくる用語を、聞かれる順番に並べています。
韓国語では「ボツリヌム・トクシン」、英語では botulinum toxin と書かれ、診察室では短く「トクシン」と呼ばれることもあります。以下は「ボツリヌストキシン」で統一します。
「韓国製」というラベルで何が分かる?
分かるのは、製造した国と、韓国の当局の許可を受けた製剤だということまでです。どの部位に何単位入れるか、どのくらい効くかは、ラベルからは読み取れません。
医薬品の承認は、韓国ではMFDSが担っています。韓国の工場で製造された製剤の中には、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け、ラベルに「Made in Korea」と記載されているものもあります。製剤どうしの違いは「良い・悪い」の差というより、作り方と単位の基準の違いとして説明されます。
韓国では複数のメーカーが製剤を出していて、クリニックのメニュー表に製品名が並ぶこともあります。製剤どうしの違いとして話題になりやすいのは、毒素のまわりにある「複合タンパク」の有無や、粉末か液体かといった作り方の違いです。
日本で注射を受けたことがある方でも、そのとき使われた製剤の名前を覚えていないことはよくあります。過去の記録やカルテのコピーに製剤名が書かれていれば、それを見せるだけで、製剤名を確かめるやり取りを省けます。
メニュー表と診察で出てくる7つの言葉
出てくる言葉は、製剤に関するもの、量に関するもの、施術後に関するものの3種類に分かれます。韓国語の言い方も添えておくと、通訳を介した会話でも聞き取りやすくなります。
| 用語(韓国語) | 意味 | 聞いておきたいこと |
|---|---|---|
| 製剤名(チェプムミョン) | どのメーカーのどの製品か | 当日使う製剤の名前 |
| 単位(タニ・ユニッ) | 効き目の量を表す単位。基準は製剤ごとに違う | 部位ごとに何単位入れるか |
| 希釈(ヒソク) | 粉末を生理食塩水で溶かす濃さ | 濃さで広がり方が変わるか |
| ポイント(ポイントゥ) | 針を刺す場所の数 | 何か所に分けて打つか |
| 複合タンパク(ポカプ・タンベクチル) | 毒素のまわりにあるタンパク質 | 繰り返し打つ場合の考え方 |
| リタッチ(リトチ) | 効き始めたあとの左右差などの調整 | 調整を考えるならいつ頃か |
| 間隔(カンギョク) | 前回の施術からの期間 | 次に打てる時期の目安 |
表の中で、日本から来た方が聞き慣れていないのは「希釈」と「ポイント」です。同じ量の製剤でも、溶かす水の量や刺す場所の数で、薬の広がり方が変わります。額のように広く浅く効かせたい部位と、エラのように筋肉の厚い部位とでは、医師の組み立て方が違ってきます。
単位の数字は、製剤が変わってもそのまま比べられますか?
「前と同じ単位で」。日本で受けたときの記録を見せてこう希望する場面に、通訳はよく立ち会います。ところが単位の数字は、製剤をまたいでそのままは比べられません。そのため医師は製剤名を確認し直します。
単位は製剤ごとに測り方の基準が決まっていて、同じ数字の単位でも、別の製剤で同じ効き方になるとは限りません。FDAが承認した製剤の添付文書にも、単位はほかのボツリヌストキシン製剤と互換性がない、と明記されています。製剤名と単位がセットで残っている記録は、それだけで医師の手がかりになります。
希釈も同じ考え方です。濃く溶かせば狙った範囲にとどまりやすく、薄く溶かせば広い範囲に行き渡りやすい、と説明されることがあります。ただ、広がり方は注入量や手技にも左右されるとされ、見解は一つではありません。どちらがよいかは部位と筋肉の動き方で決まるもので、私たち通訳チームが判断することはありません。量と濃さは、診察で顔の動きを見た医師が決めます。
診察の前に何をそろえておけばいい?
診察でよく聞かれるのは、前回の施術日、部位、製剤名、妊娠や授乳の予定、持病と飲んでいる薬の5つです。日本語のメモにしておけば、通訳がその場で韓国語に置き換えられます。
- 前回の施術日(分からなければ「何か月前か」)
- 施術した部位と、効き方で気になったこと(左右差、効きが短かったなど)
- 製剤名か、記録・明細の写真
- 妊娠中・授乳中か、近いうちに妊娠の予定があるか
- 持病と、ふだん飲んでいる薬の名前(お薬手帳の写真で十分です)
- 帰国する日と、その日の便の時間

施術ページのボツリヌストキシン注射の概要には、部位別の受け方もまとめています。診察室に同行する通訳について知りたい場合は医療通訳の案内ページを見てください。
副作用と、受けないほうがいい人
よく見られるのは、針の跡の赤み、小さな内出血、軽い頭痛で、数日で落ち着くことが一般的です。頻度は低いものの、まぶたが重く下がる、笑ったときに表情の左右差が出る、口元が動かしにくいといった症状が出ることがあり、多くは効果が薄れるにつれて戻っていくとされています。
まれですが重いものとして、注射した場所から離れた筋肉に影響が出て、飲み込みにくさや息苦しさ、話しにくさが起きることが報告されています。これらが出た場合は、旅行中でも帰国後でも、すぐに医療機関を受診してください。
短い間隔で注射を繰り返すと、体が製剤に反応して効きにくくなる可能性も指摘されています。この点は耐性と抗体について書いた記事で詳しく扱っています。
一般に、次のような方は施術を見送るか、医師と慎重に相談することになります。
- 妊娠中、授乳中の方
- 重症筋無力症など、神経や筋肉の病気がある方
- 注射する部位に炎症や傷がある方
- 飲んでいる薬の種類によっては、相互作用の確認が必要な方
受けられるかどうかの最終判断は、提携クリニックの医師が診察で行います。通訳チームは、医師の説明を日本語で正確に伝える役割にとどまります。
旅程のどの日に入れると、帰国前に相談できる日が残る?
帰国日の直前ではなく、旅程の前半に入れておくほうが、帰国前に相談できる日が残ります。内出血や違和感が出たとき、同じクリニックに相談できる時間になるからです。
効き始めは当日ではなく数日たってから、という説明が一般的です。そのため、短い旅行では仕上がりを確認するのが帰国後になることもよくあります。帰国後に効き方をメモしておくと、次回の施術で医師に見せる記録が一つ増えます。左右差が気になったときに相談したい場合は、効き始めの時期と滞在日数が重なるかどうかを、予約の段階で考えておくとよいでしょう。
施術後に渡される注意書きには、当日は打った部分をもまない、サウナや激しい運動、飲酒を控える、といった項目が並ぶことが多いです。食べ歩きや買い物をどこまでしてよいかは、施術後の説明でそのまま確認してください。同じ日にレーザーやヒアルロン酸注入を組み合わせたい場合も、順番は医師が決めます。どのクリニックを選ぶかで迷っている段階なら、クリニック探しの相談ページから希望を伝えることもできます。
日本で注射を受けたことがあるなら、最後に受けた日、部位、分かれば製剤名をメモにして、その写真をLINEで送ってください。受けられるかどうかは、その内容もふまえて診察で医師が判断します。

